視覚的胎教と探偵小説

山口俊雄 (2008). "夢野久作「押絵の奇蹟」論--迷信・科学・文学." 愛知県立大学文学部論集. 国文学科編 57:  89 - 122.
 
 
 
先日に母斑の話をしたときに、森洋介先生に面白いことを伺い、その脈絡で示唆してくださった文献を読んだ。とても面白い論文であった。基本は、20世紀前半の視覚的な胎教の探求であり、ジャンルは探偵小説と、そこで利用されている古典や迷信という話である。胎教が持つ日本の伝統というのは面白いけれども、私がまったく無知だった主題で、とても勉強になった。作家としては、横溝正史の作品で始め、小酒井の作品、夢野の作品を論じながら、ヨーロッパと日本の双方の胎教の逸話を引用している。ヨーロッパでは Pyle and Gould, Anormalies and curiosities in medicine.  日本では下田次郎『胎教』などが重要なマテリアルであるとのこと。どちらも買っておいた。数百円から1500円程度で手に入る。これらの作品は結核精神疾患なども含んでいて、それも読んでおこう。
 
森先生、恂にありがとうございます! ためになりました。
 

医学校の臨床教育の歴史について

Sint Caeciliaklooster (Leiden) - Wikipedia

 

医学史の教科書の18世紀の章を書いている。これまでルネサンスヴェサリウスの解剖学、宗教改革パラケルスス錬金術、科学革命のハーヴィーと機械論という個人を軸に書いてきた。18世紀はそのような書き方ができない時代であることが大きな理由があって、どう書こうか迷っているが、ライデンの医学校の教授であるヘルマン・ブールハーヴェの節はきっちり書く。さいわい、きちんとした書物を持っているので、これをうまくまとめればいい。

Lindeboom, Gerrit Arie. Herman Boerhaave : The Man and His Work. Methuen, 1968. 

ブ-ルハーヴェというと、臨床教育を導入してヨーロッパ各地に根付かせた重要な人物である。16世紀の初頭に攻撃が始まったガレノスの理論体系は18世紀の初頭には完全に葬られていた。その中で、キリスト教でもアリストテレスでもなくヒポクラテスが選ばれ、ヒポクラテスを用いるイングランドのシデナムが選ばれるという形になる。

また、病院の利用が組み込まれた。これは聖チェチーリア病院という、もともとはライデンの修道女院であり、ペスト患者や精神病患者の隔離収容所であったが、老人病院と市の慈善病院として成立された病院である。1710年代から1730年代まで四半世紀、6棟のうち2棟を実際の臨床講義に用いて、ヨーロッパ各国の指導者となって同じメカニズムを導入した医学教授たちが用いた。

Wikipedia を探したらサイトがあった。オランダ語で書かれていることもあり、現在のブールハーヴェ博物館が、聖チェチーリア病院の跡に建てられているということなのか、よくわからない。

 

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東京大学の旧山中寮

東京大学山中寮内藤セミナーハウス by ABREUVOIR

東大の『淡青』という広報誌がある。『淡青』というタイトルは、1920年に行った京都大学とのレガッタ戦で抽選で選んだ色とのこと。ダウンロードできる。

今回は有名な猫特集で、先生たちが書く、面白く読みごたえがある記事がとても多い。時代が変わっているのだなあと嬉しく実感する。ロンドンのUCLもしばらく前から読んで楽しい広報誌を出している。慶應大学も、本気を入れて広報誌を出すと別の魅力を出すことができるから、そんな企画を企画してほしい。

東大の山中寮が、運営者を株式会社に替えてよくなったとのこと。学生、教員、卒業生が値段が少し異なるが利用できる。だいたい2,000円と 5,000 円の間である。食事も朝昼夕とつけることができる。『淡青』の記事だと、リス、シカ、キビタキなどがとても美しい写真になっている。休む時間をここで過ごすときっといい。来年の週末には、旧山中寮に行ってみよう。

 

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パリと狂気・精神医療の歴史の画集が出版されました

Parigramme - tout paris est à lire

h-madness のエディターの一人がであるブノワ・マイエルス先生が、パリと狂気・精神医療の歴史の画集を編集したとのこと。中世から現代までのパリを取り上げ、さまざまな著名な画像や見たことがない画像を使っています。実際のページが出ておりますので、どうぞご覧になってください!

タカブシギ(鷹斑鴫)について

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日本野鳥の会からカレンダーを買う時期になった。今年のカレンダーの後ろの壁などに挿し、今月のページでめくるのを忘れていたものをめくる。野鳥の会の小型のカレンダーだと、10月はコゲラで、9月はタカブシギだった。コゲラはとても可愛く、タカブシギも生き生きとしている。画像は Wikipedia野鳥の会からもらいました。
 
シギ科というのは、私は見分けを完全にあきらめている。水辺にいることが多く、あまり見る機会がないこともある。上の Wikipedia野鳥の会の画像も、見分けはまったくできません(笑) そもそも、種類がすごく多くて見分けがとても難しい。『フィールド図鑑 日本の野鳥』のページ数でいうと、全体で400ページくらいであり、ページ数が一位で最も多いのがカモ目カモ科の40ページ、二位がタカ目タカ科の36ページ、三位がチドリ目シギ科の32ページ、四位がスズメ目ヒタキ科の30ページである。
 
タカブシギ」という名称の起源を初めて知った。タカの羽根の模様が尾羽にあるから「鷹斑(タカブ)鴫」と呼ぶという細かい仕掛けである。それに大きいものがあり小さいものがあり、オオタカブシギやコタカブシギと呼ばれているのかと思ってフィールドガイドを調べてみたが、さすがにそれはない(笑)しかし、クサシギ、アオアシシギ、コアオアシシギキアシシギコキアシシギなど、強力なタカブシギ類似のシギがたくさんいる。うううむ。