Entries from 2014-09-01 to 1 month

『モレルの発明』と精神病の主題

Adolfo Bioy Casares, アドルフォ・ビオイ=カサーレス『モレルの発明』清水徹・牛島信明訳(東京:水声社、1990, 2008) 『モレルの発明』は、1940年にアルゼンチンの作家カサーレスが発表したSF小説であり、カサーレスはこの作品で名を成した。人間を撮影…

『ノア・ノア』より、「女性は暴力的な性的征服を求めている」という概念について

ポール・ゴーガン『ノア・ノア』前川堅市訳(東京:岩波書店、1932, 1960) 必要があってゴーガン『ノア・ノア』をチェックする。ゴーガンは20世紀の文化に大きな影響を与えた画家である。広義の印象派から出発したが、後年にタヒチに移住してそこで描いたタ…

『オペラ入門』

趣味はバードウォッチングと庭いじりと音楽で、音楽は聴くほうはクラシックとジャズ、演奏するほうはピアノをもう一度習いたいと思っている。クラシック音楽でよく聞くのは、ピアノとオペラで、特にオペラは、この25年くらいオペラハウスにいって聴いている…

植民地朝鮮の水田開発とマラリアー開発原病としての側面

朝鮮が日本に植民地支配されていた時期のマラリアについての原稿を読む。朝鮮に来たイギリス人は、インドや南アフリカと同じような「ヒル・ステーション」の原理を使って、低地を避けて近くの高い丘に住むことを進めたこと。マラリアの患者の年齢構成を調べ…

「ブロディーの報告書」

晩年のボルヘスの短編集が岩波文庫から翻訳されており、その末尾に収められている短編が「ブロディーの報告書」である。ブロディー博士なるスコットランド出身の宣教師が南米を訪れて、密林の中に「ヤフー族」なる原始的な人間の種族を発見し、彼らとしばら…

夢野久作と精神医学者・諸岡存

夢野久作と諸岡存 夢野久作のドグラ・マグラに影響を与えた精神医学者として、榊保三郎の研究室で助教授をしていた諸岡存(もろおか・たもつ 1879-1946)を上げなければならない。諸岡は、1935年1月末に東京の内幸町の大阪ビルの「レインボーグリル」で行わ…

ヒロポンについて

ヒロポンは戦後の坂口安吾などで有名だが、もともとは大日本製薬が昭和戦前期に売り出した薬品の商標で、もとはメタンフェミンの薬剤である。もともとは日本の長井長義が1888年に麻黄の成分を研究中に発見した物質で、その後ながく顧みられなかったが、1935…

夢野久作と精神医学

夢野久作の日記は息子の杉山龍丸が編集して公刊されているが、日記が残存している時期の問題もあって、『ドグラ・マグラ』の構想と精神医学の関係について、あまり多くを教えてくれない。当時の九州大学の医学部は、夢野が住んでいた香椎にほど近く、九大医…

生物兵器と V for Vendetta

V for Vendetta 映画 V for Vendetta を観た。原作は1982年のイギリスのコミック。2005年に映画化された。『マトリックス』のウォシャウスキー姉弟の脚本、ナタリー・ポートマンの演技が素晴らしい。イギリス系の実力派の俳優たちも見どころがある。 近未来…

精神医療の歴史とアート

9月13日(土)の13.00 より、恵比寿の waitingroom にて、若手アーティストである飯山由貴さんの個展が開催されます。さまざまな内容と形式のお仕事が展示されますが、精神医療の歴史、特に昭和戦前期の精神病院の歴史と深く関連する資料をマテリアルに使っ…