昨日に続き、ロックフェラー財団の活動の分析を読む。文献は、Brown, E. Richard, “Public Health in Imperialism: Early Rockefeller Programs at Home and Abroad”, American Journal of Public Health, 66(1976), 897-903. 古いマルクシストの分析だけど、論点は明確で良い。
ロックフェラー財団の活動を、国外に資本を投下して効率よく利潤をあげる必要がある発達した資本主義社会の特徴に結びつけて分析した論文。発達した資本主義下の先進国は、非工業化国の資源をコントロールしなければならないし、また資本投下を受け入れるように、後進国が「開かれた」状態に保たなければならない。後進国の人的資源は、文明の恩恵を受け入れて健康で効率がよい労働者に作り変えられる必要があり、先進国の工業化された文明を受け入れる準備ができていなければならない。そのためには、先進的な医科学を応用した公衆衛生政策が後進国で実施され、しかもその恩恵に対して先進国を尊敬し、その近代文化に憧れを持たなければならない。これを実現した先兵が、ロックフェラー財団の国際保健政策であるという。
これはまず1909年のアメリカ南部の鉤虫症対策から始まった。鉤虫は暖かく湿潤な気候条件下で生息するので、米やコーヒーや綿などのプランテーション地域で被害が大きかった。先進国の消費者にとって重要なこの産業の生産性を上げるために労働者の健康を向上させることは、資本家たちにとって魅力的であった。財団の調査は、ノース・カロライナ州を例にとって、鉤虫症に侵されている地域では、同じ利益を上げるのに労働者が25%余分に必要になると発見している。
アメリカの南部が、北部に対して従属した形で経済発展をすることを可能にする道具としての鉤虫症対策は、そののち世界の各国で展開された。中国、フィリピン、南アメリカ諸国、セイロン、マラヤ、エジプトなど。中国に関して重要なことは、伝道事業にかわって土地の人民に西洋化を受け入れさせるための道具として公衆衛生が用いられたことであった。それまで伝道会が経営していた医学校はロックフェラーの事業に吸収された。そして、これらの現地の医学校や公衆衛生局は、アメリカ本土に設立されていた公衆衛生の専門医学校(1916年にホプキンスや1921年のハーヴァード)と密接に関連していた。