『山椒魚戦争』

出張に持っていったカレル・チャペックの『山椒魚戦争』を読む。栗栖継訳の岩波文庫

知性を持つサンショウウオが熱帯の海で見つかって、それを水中工事の労働力として使う会社が現れる。サンショウウオは進化して知性を獲得し、数が増えて世界中の海に住みついて、これに「人権」を与えるかどうか、どのように扱うべきなのかをめぐって、国家間の紛争が持ち上がり、ついにはサンショウウオは人間に闘いを挑んで人間をおいつめていくという筋の話。 話の前半は最初にサンショウウオをみつけた船長や、会社の社長などを主人公にして進行するが、後半は、サンショウウオについての新聞記事などの抜粋で話が進行する、歴史書のパロディになっている。 

資本主義と帝国主義と当時の学問と安手の動物愛護思想についてのとてもクレバーで面白い風刺で、それに進化思想がからんでいるから、進化を軸にした20世紀前半の歴史を教えるときの、ちょっと毛色が変わった教材に最適。