鵺(ぬえ)


必要があって、世阿弥の謡曲の「鵺(ぬえ)」を読む。岩波の古典大系(いわゆる「新大
系」ではなくて、古いほうの大系)の『謡曲集・上』の中の数ページの作品。なお、以下はネタバレがあります(笑)。

諸国を遍歴している僧が、芦屋の塩焼きの寒村にやってきて、村人が立てたお堂で一夜を明かすことになるが、そこには、夜になると光を発しながらやってくる亡霊(「光り物」)が現れる。旅の僧が話を聞くと、それは鵺の亡霊であった。この怪物は、頭は猿、尾は蛇、四肢は虎、そして鳴き声は鵺(トラツグミ)というハイブリッドのモンスターで、平家物語で、源頼政が退治した怪物である。その怪物退治の話を、退治される側が物語るという設定である。脚本としては、敗れて無念であるという怨念がこめられているせりふもあれば、「重藤の弓をきりりと絞ってひょうと放てば」という、軍記ものの勝者の視点から語られているせりふもあって、能では、さぞ奥が深い上演になるのだろうな。

画像は、歌川国芳。お手軽にWiki から拾ってきました。