『傷寒論』

必要はないけれども、傷寒論の超初心者向け解説を読む。文献は、森由雄『入門 傷寒論』(東京:南山堂、2007 )

恥ずかしいけれども事実だから仕方がないから白状すると、『傷寒論』と名がつくものを読んだのは、これが初めてである。この書物よりも精確で学問的な傷寒論の入門書はたくさんあるのだろうけれども、正直、私には、この程度がちょうどよかった。著者が言うところの「小さくてわかりやすく電車の中でも片手で読める本」で、手軽でわかりやすい。

このテキストを読めば、西洋医学の歴史の研究者なら誰でも、ヒポクラテスの「箴言集」を思い出すだろう。論理的な構成を取った論文ではなく、医療の実践上の心得が短い文章で表現されて、それが数多く並んでいる。それから、きっと、これも誰もが気がつくことだと思うけれども、ヒポクラテスの方は症状から予後を導くことに力点が置かれ、傷寒論は薬の処方に力点が置かれる。それから、傷寒論は、間違った治療が引き起こした病気という発想の色彩が強い。簡単に言うと、遍歴医か家庭医かの違いだろうか。Sivin と Lloyd はどんな風に言っているのかな。