ディケンズの女性

ディケンズの小説に登場する女性の登場人物は、「人間らしさ」が描かれていないことが多い。アグネス・ウィックフィールド(『デイヴィッド・コッパーフィールド』)のような血が通っていない道徳性や、ミス・ハヴィシャム(『大いなる遺産』)のような暗い復讐の怪物性の両極端のあいだを揺れ動いている。実生活においても、自分を見はなした母をうらみ、恋に破れ、成功したのちにも若い女優に恋をして糟糠の妻を追い出すというように、女性に対して適切な関係が取れなかった。