変態心理学講習会

第一回変態心理学講習会記事『変態心理』2(1918-9), 220-222.

大正期の日本においては、精神病への興味が高まり、精神病院を訪問して患者を鑑賞することも行われていた。その一つが、変態心理学講習会が主催した「実習」である。

最後の実習は、根岸病院で開かれた。患者の製作品、奇妙な手紙、文字などが供覧され、精神分裂病の患者のデモンストレーションが行われた。さらに、患者が最後には20-30名そこに集まって、思い思いのふるまいをするという、「浮世離れした百花狼藉」が現出した。そして、実習生たちは、根岸病院の中を廻っていった。奇妙な精神病者たちはみな記憶に残り、特に鉄窓の中で、頭を床にたたきつけて号泣しているうら若い女患者は胸を打った。この第一回の実習には日本女子大学から多くの参加があり、卒業生の宮本百合子(当時は中条百合子)も参加していた。

この実習の成功に心をよくして、第二回は、さらに実習の範囲が広がり、根岸病院に加えて、巣鴨家庭学校と、監獄所内見学が付け加えられた。監獄については、「特にその名を秘す」とされている。