映画『天才スピヴェット』を観る.監督は『デリカテッセン』『アメリ』『エイリアン4』などのジャン・ピエール・ジュネで,個性が強く鋭い切れ味のブラック・ユーモアと,不思議な経路を通ってたどりつくハッピーエンドの感覚がとてもよかった.『アメリ』の時に,観た人が幸せになる映画という言い方がよくされたが,ハッピーエンドになるにもかかわらず、お説教されている気分が一切しないのがいいのかなと思う.もう一つ,個人的な話になるけれども,モンタナの牧場を舞台にしているところも気に入った理由である.数年前にモンタナの牧場つきのホテルで開催された一週間ほどのワークショップに参加したことがあり,ロッキーの山と,青い空と,丘を移動する家畜の群れが,最も印象に残っているワークショップである.こんなところに人間が文明を作って住んでいるのかという不思議な感覚を持たせる土地だと思う.それを素材にして醸し出される温かいブラック・ユーモアが,やはりフランスはお洒落だなあと思わせる.