早川智『ミューズの病跡学 I 音楽家篇』『ミューズの病跡学 II 美術家編』

早川智『ミューズの病跡学 I 音楽家篇』(東京:診断と治療社、2002)

早川智『ミューズの病跡学 II 美術家編』(東京:診断と治療社、2004)

 

歴史上の著名な音楽家と美術家について、どのような病気にかかっていたか、それが作品にどのような影響を与えたかという主題を、それぞれの個人について連載した記事をまとめた書物。シューベルトが梅毒であったとか、チャイコフスキーコレラで死んだとか、レンブラントが描いたモデルが乳がんに罹っていたように見えるとか、医学史エピソードを満載した書物。それぞれの情報の出所は、主に英語で書かれたパソグラフィー関連の記事であるが、それらをうまくまとめて著者の考えも挟んで面白い文章にまとめあげている。このような好事家的な医学史は、近年の学術的な医学史研究とは手法も視点も研究方法も全く違うが、医学史全体の研究の進展にともなって、医師たちを中心に一定の広がりを見せていて、私は個人的には歓迎している。印象を言うと、英米圏での流行にともなって日本でも再興しているのかなと思っている。読んで楽しいし、パーティで話したりするときの小噺が無数に詰め込まれている。