実佳が京都でリサーチをしながら、医学史家の私に「角大師」を買ってくれた。これは良源(りょうげん 912-985) という平安時代の僧に関して、後に発展した護符である。良源の諡号(しごう)は慈恵大師、通称は元三大師で、これは正月の三日に生まれたため。天台座主となり、比叡山延暦寺の中興の祖である。
彼を象った護符が、角大師(つのたいし)や豆大師の厄除け大師である。象るという日本語は目に見えるような姿を取るという意味。護符というのは、英語に直すとアミュレットである。これらはいずれも魔除けの護符である。角大師というのは、二本の角を持ち、骨と皮にやせ細った夜叉の像である。これは、良源が夜叉の姿に化して疫病神を追い払ったときのものとのこと。毎年正月に京都付近の天台宗の寺などで売り出していたという。