科学革命期の知識のネットワーク論を読む。文献は、Lux, David and Harold J. Cook, “Closed Circles or Open Networks?: Communicating at a Distance dduring the Scientific Revolution”, History of Science, 36(1998), 179-212.
ある科学的な言明が真理であるというのは、現実にはどうやって判断されるのだろうか?理論的には、実験なら再現してみればいいし、歴史資料なら、論文の註からたどって読んでみればいい。しかし、実際問題としては、学者はそんなことはほとんどやらないし、再現できない実験や観察などでも、科学的な真理として受け入れられている。それなら、現実上はどうやって我々はある言明を科学的であるとして受け入れているのか、科学者たちはどのように科学的な言明を「作っている」のか、どのように人に伝えているのか。知識の生産と流通のメカニズムを研究することが、ブルーノ・ラトゥールなどの理論家にも影響されて、この30年くらいの科学革命研究の一つの主流になっている。
この論文は、著者たちが「弱いネットワーク」と呼ぶ知識の伝達のルートが、地理的に広大な地域から「事実を正しくうつした」情報を集めてくるのに重要であったということを論じている。色々とヒントになる洞察が散りばめられていい論文だった。