現代能楽集「鵺」

新国立劇場の小劇場で「鵺」を観る。坂手洋二の脚本に、鵜山仁が演出。坂東三津五郎、田中裕子さんが出演。あと、私が名前を知らない役者さんだったけれども、たかお鷹さんというベテランのかたと、村上淳さんという若い俳優が出ていた。

全体は三部構成で、第一部の舞台は源頼政が挙兵した宇治川の岸辺という設定で、そこに頼政に討たれてむくろ船に入れて流されたヌエの亡霊がやってくるというストーリー。田中裕子さんが白拍子に扮した雌のヌエ(トラツグミ)の亡霊という設定、坂東三津五郎が雄のヌエになって、歌舞の早変わりを見事に演じた。第二部はマンション建設がすすむ大としの川辺で、「ヌエ塚」がある場所で昔は愛し合っていた男と女が出会う話。第三部は舞台をベトナムに移して、そこで日本企業の開発の先兵として働くもと過激派の日本人と、人身売買などの話し。

第一部のインパクトがあまりに強すぎた。田中裕子さんの白拍子と三津五郎の早変わりもよかったし、なんといっても話全体が「平家物語」に依拠しているという厚みがあった。第二部、第三部は、面白かったけれども、それに較べると、かなり散漫な感じがしてしまったけれども、他の人たちは、もっと現代的な設定を楽しんだのかなあ。