ココ・アヴァン・シャネル



もう一日無駄話です。 

同じく飛行機の中で観た映画。『アメリ』のオドレイ・トトゥが、若き日のココ・シャネルを演じている。機内ショッピングのカタログで知ったのだけれども、オドレイ・トトゥは、キットマンの後を継いで、シャネルの5番の香水の新しいモデルになっているようですね。

孤児院で育ったココが、最初は田舎貴族の愛人になり、その館で、田舎芝居の女優か娼婦を相手にした乱痴気騒ぎが続く毎日に飽き飽きして、独立して仕事をしたいという野心を持ってパリに行き、夫人用の帽子のデザイナーとして成功するまでを描く。強力で金持ちの男に寄生している女から、個性と才能を発揮した仕事をして独立し、恋をして(でも結婚はしない)、幸福と名声を手に入れるという話である。シャネルというブランドの創始者ということもあって、女性向けファッション誌は、こぞってこの作品を取り上げて絶賛したんだろうな。

それまでの装飾でごてごてした服ではなく、仕事ができる、乗馬服やブルターニュの漁師のシャツにヒントを得た服をオドレイ・トトゥがはさみで布をじょきじょき切って作るあたりなど、20世紀の女性の解放の歴史や、「女性の社会文化史」の授業の素材として学部生に見せるのに、こんなにいい映画はないだろう(笑)

フィナーレは、それまで帽子屋として成功していた「ココ」が、自分がデザインしたシックでシンプルなドレスをモデルたちに着せたファッションショーを開いて「勝負に出た」ところで終わっている。ショーの会場で、いわゆるシャネル・スーツを着たココが、自分が「囲われもの」だった時代の回想にふけっていたが、ショーの聴衆の熱狂的な拍手でふと我に帰り、自分の成功を悟る -「ココ」が「シャネル」になる、ということなんだろうな-場面のトトゥの表情と演技が、それはそれは素晴らしかった。

人台、メジャー、裁ちばさみ、チャコといった、私の小さい頃の記憶に染み付いたアイテムが登場したのも、心に響いた。