20世紀の後半に、疾病に対して「障害」、治療に対して「リハビリテーション」という概念が整理され、障害とリハビリテーションはどのように医学と関係を持つのかということが議論された。一方、精神医学にこのリハビリテーションという概念を持ち込んだときには、ある種の混乱と抵抗があったという。身体疾病では、脳卒中とその後の麻痺のように、疾病とその後遺症という分け方が截然とできるが、精神疾患では、どこまでが疾病そのもので、どこがその後遺症・結果なのかという区分わけが難しい。ある行動は、病気の症状とも読めるし、病気の結果としての能力低下であるとも読める。その中で、病気に対する治療・障害に対するリハビリという二元論を認めるということは、精神医療の敗北を認めることだという雰囲気があったという。また、精神医学は、入院治療を重視し、生活場面での障害やその軽減に大きな関心を持ってきた。しかし、これは、医療が提供できるサービスの限界を見極めることよりも、その範囲を拡大することに力点がおかれていた。