書評で見かけてつい誘われて「フレイバー類義語辞典」という面白いレファレンスを買う。文献は、Segnit, Niki, The Flavour Thesaurus: Parings, Recipes and Ideas for the Creative Cook (London: Bloomsbury, 2010)
まず、全体としては「炒ったもの」「お肉」「チーズ風」「土っぽいもの」といった20くらいの大項目に分かれている。「炒ったもの」の大項目は、さらに「チョコレート」「コーヒー」「ピーナッツ」の中項目に分かれ、それぞれの中項目がさらに「チョコレートとラズベリー」「コーヒーとオレンジ」「ピーナッツとチキン」といった小項目に分かれている。たとえば「コーヒーとオレンジ」を引くと、「朝食で似合いの組み合わせ。シチリアのサン・マッテオではオレンジとコーヒーのマーマレードを作っていて、これが天国のように美味しい。」とあり、そのマーマレードの作りかたが解説されている。意外性に満ちた情報がつまった、読んで楽しいレファレンスである。
冒頭に、ラムとアプリコットの組み合わせは、互いに補い合うという程度の言葉で表現できるものではなく、この組み合わせは高次の秩序の世界に属する神の思し召しであり、運命の雰囲気を持っている。このように、「論理的な発見」のカテゴリーに属するような味の組み合わせとしては、ベーコンとエッグ、タルトゥーフォとパスタ、ステーキとフライドポテト、ストロベリーとクリームなどがあるが、その一つとして、「ご飯とお醤油」があげられていた。マグロのお刺身にちょっとお醤油をつけてご飯にのせた後のご飯は、確かに「運命」の雰囲気がある。ラムとアプリコットについてはわからないが、それ以外のものについては説得力がある。