『フィガロの結婚』

新国立劇場で『フィガロの結婚』を観た。ミヒャエル・ギュットラー指揮、アンドレアス・ホモキ演出。

メロディもストーリーも快活なオペラの中に、アンシャン・レジームの身分制と性のゆらぎが込められている傑作。『フィガロ』という歌劇についてコメントさせると、歴史学者としてのセンスが分かるとまで言われている作品だから、軽々しいことは言えない(笑)ジェンダー論とか階級論を覚えたてのころの自分が、このオペラについて何を言っていたかは、憶えていないことにしよう(爆)

今回の演奏と演出は、とりわけ軽やかで垢ぬけたものだったと思う。序曲から、オーケストラの音作りの構造が透けて見えるような、スケルトン仕立ての演奏を聴いているような感じがした。(妙なたとえですみません。)主役級の歌手は誰も素晴らしかった。二幕のケルビーノのアリア「恋の悩み知る君ぞ」では、ケルビーノが、まっすぐに聴衆に向かって、「恋の悩みを知っていると思っている皆さん」と歌いかけるという、聴衆をまともに挑発するような趣向になっていて、私も含めて、誰もがこの美少年に恋をした気分になって、「胸騒ぎ」がする気分になった。総じて、胸騒ぎが多い作品だけど。