美と医学


Hau, Michael, “The Normal, the Ideal, and the Beautiful: Perfect Bodies during the Age of Empire”, in Michael Sappol and Stephen P. Rice eds., A Cultural History of the Human Body in the Age of Empire (Oxford: Berg, 2010), 149-169.
必要があって、19世紀の「美の医学的な考察」に帝国、階級、大衆文化の枠組みを読み込んだ、優れた文化史の説明を読む。この著者は、The cult of health and beauty in Germany という優れた書物を書いていて、一度、このブログでも取り上げたことがある。

18世紀から19世紀の前半まで、ギリシア彫刻の美を美の基準とし、その数学的な比率によって身体の美を理解する美学が支配的であった。この美学には、医者や生理学者も参加していた。19世紀の後半に、ダーウィニズム、帝国主義、階級社会の成立、大衆文化、ヴィクトリア型ジェンダー像が確立して起きたことは、このギリシア=ヨーロッパの美の理想という中心主題はそのままに、様々な関心によってそれが変奏されるようになったことである。これを通じて、中産階級も労働者階級も、望ましくない属性を持つ体と対比して自己理解するようになっただけでなく、自己を「つくる」ための媒体として身体をとらえ、のぞましい身体にすることでのぞましい自己になるという鋳型ができあがった。これは、たとえば女性が運動するようになったという意味で解放であると同時に、自己の身体という新たな文化的な束縛を得たことでもある。

画像は、日本女性・イタリア女性。これらは医者・民俗学者の仕事であるが、そこにもエロティシズムが入っている。