『サマルカンドの金の桃―唐代の異国文物の研究』

エドワード・H・シェーファー『サマルカンドの金の桃―唐代の異国文物の研究』日本語版監修・伊原弘、日本語版訳・吉田真弓(東京:勉誠出版、2007)

中国の都には陸と海のシルクロードを通ってアジアの様々な文物が運ばれてきた。皇帝、貴族、高位の僧たちのための奢侈品が中心であったため、独特の華やかな雰囲気をもたらしている。私の想像力の中では、隋の都の洛陽や唐の都の長安は、正倉院の宝物を何十倍にもして宝石箱のようにぶちまけたようなのだろうなということになっている。これは歴史学者としてだらしない妄想であるが、その起源の一つが、本書のような、豪華絢爛たる異国文物を、その香気に舞い上るかのような文体で書いた書物である。まずタイトルの『サマルカンドの金の桃』からしてすごい。なんとエキゾチックで高貴な雰囲気があるのだろう。学問的には色々あるのだろうし、もっといえば歴史記述の方法論の議論の中では、その出発点にも立っていないのだろうが、その全てを超える魅力が本書にはある。高価で珍奇な異国の文物についての該博な知識、それを衒学的に華麗に展開する文体、そして陶酔した語り口。私は医薬の項目を丁寧に読み、お香についての項目は、あまりに陶酔的なので途中で読むのを止めなければならないほどだった(笑)英語の原文も安くないけれども、そちらを買うことにします。