Packard, Randall, “Visions of Postwar Health and Development and Their Impact on Public Health Interventions in the Developing World”, in F. Cooper and R. Packard eds., International Development and the Social Sciences: Essays in the History and Politics of Knowledge (1997), 93-118.
20世紀の発展途上国に対する医療援助の歴史。ポイントは、第二次世界大戦以降には、これが「発展」の言葉で語られるようになったこと。発展の言葉は、一見すると脱政治化したが、実は戦前の植民地医療と大きく違うものではない側面があること。その植民地が宗主国にとって何を生産する国であったかが重要であった。生産の拠点に医療設備が集中して作られ、都市を除くとそれ以外の地域には医療は投下されなかった。しかし、戦後になると、世界の貿易の中で発展途上国の健康は新たな意味を与えられた。それぞれの発展途上国が、全体として食糧を生産して世界に供給する土地となったので、特定の産業の生産地だけでなく、全体の健康が重要となった。(きれいな引用あり)また、食糧の生産を通じて豊かになった発展途上国の人々は、先進国が生産した工業製品を買って、世界の貿易に貢献するはずであった。そのためにも、彼ら全体を健康にしておくことに意味があった。DDTをはじめとする、比較的安価な対策は、独立した発展途上国にも人気があった。イランでもベトナムでも、マラリア対策はそれぞれの政府が人々の人気を取り付けるための重要な手段であった。結核に対するストレプトやINH など、多くの患者がいる状況に変化を与えることができる薬学的な革新も数多く存在した。