中世の身体の歴史

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来年は「身体の歴史」を一般教養で教える。これまでは疾病の歴史、精神医療の歴史、医療の歴史という三つの主題を持っていたが、ここに身体の歴史を加える。これは20年以上前に初めて教壇にたったときに導入したが、あまりうまく行かなかった部分が多い。しかし、20年間で非常に広い視点に広がったので、成立する話になると思う。

この話で、古代と中世というのがやはり難しい時代である。本格的な専門なり通史なりの仕事が非常に限定されているので、いい本をたくさん読んでおかないとならない。そこで非常に優れた本が、Jack Hartnell の中世の身体という書物である。身体の歴史について、大きな発展をした部分は、身体をどのように表現しているかという問題と取り組んだものであり、そこには現代の私たちが経験している新しいテクノロジーと不思議で深い交差が作られている。著者は芸術と宗教の研究者であるから、そのような主題を取り上げるのは最高の主題の研究者である。

まず中世の身体の図版の数が90点近く、どれも非常に面白い画像ばかりである。また、キリスト教だけではなく、イスラム教とユダヤ教も積極的にカバーしていて非常に面白い。キリスト教徒とイスラム教徒が結婚してできた子供はどのような存在か、ユダヤ教徒だとどうなるか、というような議論も取り上げられている。来年度の授業では、いくつかのパートを使うことにすると思います。

 

添付の画像は1495年に聖コスマスと聖ダミアンが脚の手術をする場面。その日に死んだエチオピア人の脚を手術で付け替えるという人種を超えた臓器移植をする場面である。

 

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