南米のシャーマンと薬物について

永武, ひかる. (1995). マジカル・ハーブ : 南米の幻覚性植物とシャーマニック・ヒーラー, 第三書館
永武, ひかる. (1996). アマゾン漢方, NTT出版.

ペルーアマゾン、アンデスに潜む植物のスピリットを、迫力のカラー写真で紹介。

1 アホ・サッチャのまじない
2 アンデスの秘儀
3 アマゾンの呪術師と神秘の植物アヤワスカ
4 密林ハーブガイド
5 ハーブからエコロジー

 

中南米シャーマニズムは幻覚性植物との結びつきが非常に強い。まだきちんとした学術的な書物を読んだわけではないが、最近読んだ二冊の入門者向けの書物から抜き書きをはじめた。中国と同じであるという「アマゾン漢方」というタイトルと、仏教やタオイズムの正反対であるという、まったく異なる。

南米のシャーマニズムと薬用植物のベースになっている植物の世界を記録する必要がある。シャーマンや呪術師の技術やビジョンは、非常に捉えにくく、主観的なものであり、かつ文化的な背景に埋もれているという。シャーマン世界の本質は目に見えない。つまり<力>のある植物に含まれる高精神性物質が、不思議な精神状態やまったく道のシナリオをもたらし、常に変化し続けながらも、現出するものが真実であると強く感じさせるためである。このような経験は、シャーマニズムが息づいている社会ではごくあたりまえのことで、シャーマンは、宗教的エクスタシーをともなう内なる旅を通して、英知や真実の知識を得るのである。その隠された伝統を引き出すのが、幻覚性植物を通じて与えられる、世界をつかさどるものや、森の精霊によって差し出される恵みである。

シャーマンによる内面世界へのアプローチは、仏教やタオイズムの黙想的なアプローチとほとんど対極にある。これらの無我の境地にいたるアプローチは、心の動きを静止して、すなわち清浄と平静をもたらし、現実世界の執着を解き放つ。しかし、本書の素晴らしい写真に見せられるシャーマンのアプローチは、まったく異質のものである。先祖代々継承されてきた混沌として一種芝居のような手法であり、各地の伝統的な土着植物に含まれる自然界の幻覚性物質による精神的・身体的な作用に基づいている。

シャーマンの知識や力は、その植物の体験から得られるので、シャーマンの世界と植物の世界は分断あれることのない、ひとつの連続体である。