ウィルス概念の成立

ウィルスの概念の成立史の論文を読む。文献は、Helvoort, Ton van, “History of Virus Research in the Twentieth Century: the Problem of Conceptual Continuity”, History of Science, 32(1994), 185-235.  このあたりのことになると、予備知識が不足していて、まだテクニカルな把握が全然ついていかない。

細菌よりも小さな病原体としてのウィルス概念は、19世紀末のタバコモザイクウィルスの研究に始まる。ロシアの植物病理学者のイヴァノヴスキーやオランダの細菌学者のバイエリングらが、タバコモザイク病の病原体はフィルターを通過することを突き止めて、「細菌よりも小さな病原体」の存在が科学者たちに明らかになった。しかしこの段階では、それは極小のバクテリアなのか、それとも感染した細胞が産み出したものなのかは明らかになっていなかった。 1930年代と40年代に、「極小」というサイズによるカテゴリー化は実体を反映せず、その中に多様な性格の病原体が含まれてしまうという疑問が出されたときでも、「ウィルス」による病気の病理的な現象が類似しているという水準での統一性が保たれていた。 1950年代以降に、その増殖のメカニズムの共通性が明らかにされて、現代的なカテゴリーの概念が生まれた。