新しい医学史レファレンス

Jackson, Mark, ed., The Oxford Handbook of the History of Medicine (Oxford: Oxford University Press, 2011).
オクスフォードから出た医学史のハンドブック。1990年にラウトレッジから出た Bynum and Porter, Companion Encyclopaediaから20年ぶりに出版された大規模な医学史レファレンスである。しばらく前に買ってあったけれども、未読山の中に埋もれてしまって、いままで手に取る機会がなかった。

ジャクソンのイントロダクションの外は、3部構成になっている。第1部は時代ごとのセクションで、古代・中世・近世・啓蒙・近代・現代にそれぞれ1章が当てられて、合計で6章。第2部は「地域と伝統」という主題で、その問題の概観と、中国・イスラム・西欧・東欧・アメリカ・ラテンアメリカ・サハラ以南のアフリカ・南アジア・オーストラリアで合計10章。第3部はテーマごとの章を集めたもので、子供時代と思春期、老年、死、歴史人口学、慢性病、公衆衛生、医療の政治経済、労働と環境、科学と医学の歴史、女性、性、精神の医学、倫理、動物、代替医療、オーラル・ヒストリー、映像というテーマで、17章が立てられている。

内容だけれども、書かれたものについては、ラウトレッジの2巻本よりもずっとよくなっている。ラウトレッジのレファレンスは、それまでは学問としての体裁を整えていなかった医学史という領域において、ああいうアカデミックな外貌を持つものをまとめ上げたことに大きな意味があり、章の中には感心しないものもあったことは事実である。このレファレンスは、医学史家としての訓練を受けてきたプロたちによって執筆されていて、どれも信頼できるもののように見える。