再生医療研究の歩む道

医学書院/週刊医学界新聞(第3284号 2018年08月06日)

 

週刊医学界新聞の先週号が「再生医療研究の歩む道」という面白い記事。大阪大学の澤先生と理科学研究所の高橋先生という方たちが、日本のiPS細胞関連の基礎研究と臨床研究がどのように世界をリードしているかということを話している。プラスの意味、そして最近書いたマイナスの意味、いずれも良い議論が出ている。

特に、高橋先生が「航空機開発は[ライト兄弟の最初の飛行成功の日の]300メートルしか飛べないところから始まった」ことを強調していること、それを澤先生が別の視点で読み替えているのは、医学部・理学部のプラスとマイナスの側面、もしかしたら微妙な違いをよく表している。

再生医療研究が初めて「成功」して、それからしばらくは事実上は「失敗」のケースが多い。これは澤先生がおっしゃっていることだが、1967年に南アフリカの心臓移植が成功したときに、これは手術後に18日間生存できたという意味での「成功」であり、「失敗」と考えてもいい。札幌での生存は3か月であり、失敗の度合いが少し減り、成功の度合いが少し上がったと考えるのがよい。そして、現代では10年や20年生きることができるようになって、成功の度合いが非常に上がったと考えられる。

ここに行くまでに、最初の300メートルや18日間という数値そのものよりも、患者や患者の家族とどのように交渉して合意できるのかのほうが重要だと私は思う。