主観と客観とビッグデータと少数データ

神田橋條治. (2017). "主観・客観." 九州神経精神医学 63: 73-74.

私が出席できなかったセミナーで、九州大学精神科医の黒木先生が配った論文を読ませていただいた。私が最近考えていることと重なる主題である。近年の精神医療で主観と客観の問題がどのように扱われるかという話である。私の観点から見ると、計量的なデータをどう考えるのか、そして面白い少数データをどう考えるのかという二つの視点があり、これらの洞察をどのように組み合させるのかということである。

神田橋先生は「主観・客観」というタイトルで、精神医学の現状の中に主観と客観の双方の衝突を見る。患者の主観はどのようなものか、治療者はそれをどのように客観の枠組みで議論できるのか。確かさ、正しさはどのように客観の世界を作り出すのか。そこで患者の主観はどのように排除されるのか。治療者はどのように科学的な枠組みに惹かれるのか。患者たちはどのように啓蒙的な視点を組み込んでいくのか。そして、このようにして少数派であり、同時で個人である拠点がなくなっていくという警鐘である。その通りであると思う。

一方で、面白い少数データが作り出される一定の構造という視点もある。私は、こちらの考え方に惹かれている。モダニズムの時代の面白い少数データを、絶対の否定ではなくて、ある一定の少数データや個性がある個人を作り出している一定の構造だからと考えている。このあたりを、どのように考えて何を読むのか、一生懸命探しているところです。