『肥満のメタモルフォーシス』 ― ヴィガレロの新著のペーパーバック化

ジョルジュ・ヴィガレロはフランスの歴史学者。身体や健康を中心にした多くの主題の歴史を書き、日本語の翻訳も、『清潔(きれい)になる「私」』『強姦の歴史』『美人の歴史』『身体の歴史』(共著)など数多い人気の著作家。

彼の新作の英訳が『肥満のメタモルフォーシス』(2013)。今年になってペーパーバック版も刊行。中世から現在までのヨーロッパの肥満の概念の変遷をたどった著作Kindle だと2500円程度です。出版社のみなさま、翻訳はいかがでしょうか?

 

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クリスチャン・ボルタンスキー展覧会(東京都庭園美術館 9/22-12/25)

白金台の東京都庭園美術館で、クリスチャン・ボルタンスキーの展覧会。展示は昨日始まって、12月末まで。今学期の大学院のセミナーの後に学生と一緒に行けるといいと思っている。

ボルタンスキーという現代芸術の作家の名前を最初に聞いたのは、愛知美術館の学芸員の中村さんから。その時に知ったのだが、ボルタンスキーはナチスホロコースト強制収容所などを素材と背景にした作品で知られているが、フランスの精神病院でフィリップ・ピネルの人道的な改革と近代精神医学の聖地として知られるサルペトリエールの教会を利用した写真の展示でも知られている。今回の展覧会のために日本にいらっしゃるということであるが、日本の精神病院、あるいはハンセン病の療養所でのお仕事に興味があるということであれば、私のような医学史の研究者にご一報くだされば。よろしくお伝えください。

 

www.teien-art-museum.ne.jp

 

 

 

 

闘病記研究会の開催のお知らせ 

 

闘病記研究会フォーラム

「闘病記が出版される意義・読まれる意義」

 

     闘病記は患者さんやそのご家族が読む本と思われがちですが、看護師さんによる闘病記読書会や看護学生の授業でも活用されて始めています。また、市民による闘病記の自費出版を希望する方も増加し、書き手、読み手の双方から「当事者の声」が求められています。

今、社会から求められる日本の闘病記文化が、いつどのように醸成され、そして現代どのように利用されているかを考察し、私たちの「病いと生活」にとっての闘病記の意義を考えます。

 

日時:2016年10月29日(土)13:00~16:30

会場:大阪市立中央図書館 5階大会議室(定員300名)

〒550-0014 大阪市西区北堀江4-3-2

交通:地下鉄千日前線長堀鶴見緑地線西長堀駅下車 7号出口すぐ

http://www.oml.city.osaka.lg.jp/?page_id=292

参加費:無料

参加申込:不要(直接会場へお越しください。当日先着順:定員300名)

主催: 日本学術振興会課題設定による先導的人文学・社会科学研究推進事業

『医学史の現代的意義―感染症対策の歴史化と医学史研究の社会との対話の構築』研究班

(研究代表者:慶應義塾大学経済学部教授 鈴木晃仁)

共催: 大阪市立中央図書

事務局:闘病記研究会実行委員会(健康情報棚プロジェクト事務局内)

        メールアドレス:tana-project@hotmail.co.jp

プログラム   ※事情により講演者・演題・順序が変更する時があります。

 

【第1部】 闘病記研究 13:00~14:20 

①    「闘病記文庫読書感想文コンクールの取り組み」吉崎朗光氏(富山福祉短期大学)

②    「現場の看護師と闘病記を読む」

和田恵美子氏(京都学園大学健康医療学部看護学科准教授)

③  「闘病記を手に取る環境づくり」石井保志氏(健康情報棚プロジェクト代表)

 

【第2部】 講演 14:30~16:30

①  「「闘病」という社会的造語と「『闘病』記」の誕生」門林道子氏(日本女子大学日本女子大学人間社会学部学術研究員)

②  「出版社から見た闘病記」金井一弘氏

(星湖舎取締役代表、「チーム闘病記」代表、NPO法人大阪公立大学共同出版会編集長)

※当日会場では大阪市図書館所蔵の闘病記の一部を展示します。

 

 

 

フィッツジェラルドと精神医療と文学・メモ

石塚さんが編集された短編集『病短編小説集』で、不眠に関するフィッツジェラルド(『華麗なるギャツビー』)の傑作を読んだあと、たまたま、エコノミストフィッツジェラルドの「新作」の記事を読んだので。

きちんと調べなければならないのだけれども、スコットとゼルダフィッツジェラルド夫妻は、モダニズムと精神病の一つの範例である。結婚して最初は文学的にも二人の関係の上でも好調だったけれども、すぐにスコットはアルコール依存症や不眠などさまざまな精神の不調と疾患に悩まされ、ゼルダは本物の精神疾患になり、フランスやスイスで世界一流の精神病医にかかり、サナトリウムに収容されたりする。しかし、ここから、この夫妻の文学などに関してもう一つの盛り上がりがある。精神疾患で病院に収容されている間に、ゼルダは自伝的な作品を書き、スコットもみずからの精神の不調を書き綴るようになる。このあたり、きちんと調べよう。 

そのようなスコットの「新作」が出た。ここで編集されているスコットの短編は、どれも未発表のものであるという。ちょうど、彼自身のアルコール依存症と、妻のゼルダ精神疾患が問題となっていた時期に書かれたものが多いとのこと。ぜひ、読んでおこう。この話が特に必要とされている学会での講演には間に合わないのだけれども、それでも読んでおこう。 

 

amzn.to

Keio Young Scholars' Workshop on the History of Medicine, Disease, and the Body (21 Sept)

We are going to have young scholars' workshop on the history of medicine, disease, and the body on 21 Sept 2016 at Dokuritsu-kan (Building no.4), D-206 at Hiyoshi Campus of Keio Univeristy.    

As a development of the graduate seminar of Keio Graduate School of Sociology, six young scholars will present their research papers.  Papers, questions and discussions will be in English.  Please feel free to attend.  

 

Programme

9:50-10:00 Akihito Suzuki (Keio University)
Opening Remark 
 
10:00-11:00 Eri Nakamura (Hitotsubashi University)
Who Deserves War Pension?: The Asia-Pacific War and Psychiatric Casualties in Japan
 
11:00-12:00 Saori Takama (Onomichi City University)
Conditions for Establishing the Integrated Community Care System: Onomichi Case Study
 
12:00-13:00 Lunch
 
13:00-14:00 Megumi Komata (University of Tokyo)
The Genesis of the 2009 Revision of the Organ Transplant Law in Japan: An Investigation through Five Interviews
 
14:00-15:00 Motoyuki Goto (Keio University)
Pshychiatric Hospitalization as Family Policy in Japan
 
15:00-15:10 Break 
 
15:10-16:10 Pursakova Alina (Keio University)  
Coming Out on YouTube: The Art of Performing on Camera
 
16:10-17:10 Rie Yamada (University of Tokyo)
The Family Narrative in Psychiatry: Zenkaren in late 20th-Century Japan
 
17:10-17:15 Akihito Suzuki
Closing Remark 
 

医学史の「アウトリーチ」についてのワークショップ(9月2日・3日)

日本における医学史研究が、さまざまな経路と要因を通じて、学問的な水準を着実に上昇させています。この方面で何をすればいいのか、どんな史料を確保し、どんな方法論や視点を発展させればいいのか、そのような学者の間での議論も行われるようになりました。

一方で、新しい医学史研究の多様な視点を考えますと、このような学術的な洗練と多様化を、社会と対話して発展させること、社会の中で医療の歴史を考えるダイナミズムを作ることを考え始めなければなりません。そのような方向で、日本学術振興会から、「先導的人社」の枠組みで、実社会との対話という研究資金をいただきました。これを実践する時に、医学史研究の発展において先陣を切ったイギリスやアメリカの事例を参考にして、医学史を「アウトリーチする」という仮設的な戦略を考えています。

現在の段階では、鮮明な方法はまだ何も定まっていないというのが正直なところです。ここでは、いくつかの事例を紹介することしかできません。主題によって語り掛ける人々が違い、語り掛ける媒体も変わってくると思いますので、学術的な主題のみ提示するというものもあると思います。学者として参加したい方、あるいは社会に医学の過去の姿を表現する主体として参加したい方、たんに興味がある方、色々な方の参加をお待ちしています。 

 

 

先導的人社ワークショップ プログラム

 

日時 2016年9月2日(金)、9月3日(土)

場所 慶應義塾大学 日吉キャンパス 独立館 D-305教室

 

 

9月2日(金) 

10:00~11:30  医学史のアウトリーチについて 

           鈴木 晃仁(慶應義塾大学 経済学部 教授)

 

13:00~14:30 「沖縄長寿説の成立と展開―

        水島治夫『<公刊前>1921-25年分府県別生命表』を発端として―」

           逢見憲一(国立保健医療科学院 生涯健康研究部 主任研究官)

 

14:30~16:00 「近代日本看護の歴史」(仮題) 

           山下 麻衣(京都産業大学 経営学部 教授)

 

16:00~17:30 「医制」再考–明治初期医療・衛生政策の再検討の一環として– 

           尾崎 耕司(大手前大学総合文化学部 教授)

 

9月3日(土) 

10:00~11:30 「病者の文学を軸としたハンセン病問題啓発のための模索」

           佐藤 健太(疾病文学の編集者)

 

午後

東京都立松沢病院リハビリテーション棟1Fにて行われる

「私宅監置と日本の精神医療史」展見学及びギャラリートークに参加

 

 

※独立館 D-305教室

日吉駅から日吉キャンパス側へ横断歩道を渡り、守衛所の手前左にのびる桜並木のゆ  るやかなスロープを上がります。正面階段手前右の入口を入り、右手トイレ奥のエレベーターで3階にお上がりください。