自殺のリサーチより、今日は画像の紹介。文献は、矢野春利「日本の縊死百二十四例ニ就テ予ガ法医学的ノ研究」『国家医学雑誌』No.410(1921), 109-124.
法医学の論文で、縊死の死体があったときに、自殺と他殺を見分けるための心得を、自身が実地に見た例を元に議論した論文。姿勢や顔色(「屍白色」)や用具などが丁寧に議論されている。その論文に30点の縊死現場イラスト集が添えられている。イ、ロ、ハ・・・という番号が振ってあることもあって、イロハ歌留多のようだけど、どれも首くくりの様子である。
右端上から二番目は、「19歳の男子、前夜敵討ちの演劇を見、翌朝敵討ちの風を装い、白粉を塗り、眉を作り、たすきをかけ、鉢巻をなし、箒とはたきを差して縊死せる者」。明治34年のコスプレ自殺、というわけか。昨日の大西の言葉を使うと、確かに「衒気・茶気」に溢れている自殺である。我々の琴線に触れ、人々の紅涙を絞る自殺というわけではない?