ラム・ドゥードゥル登頂紀

今日は無駄話を。戦後イギリスのユーモア小説を読む。文献は、W.W. Bowman, The Ascent of Rum Doodle (London: Pimlico, 2001).

ヒマラヤの世界最高峰の登頂に挑んだイギリス人の男たち7人のチームの奮闘を描いたユーモア小説。1956年に出版されて、出版最初は全く注目されなかったが、登山家や極地科学者たちの間で熱烈に支持されて、長い時間をかけて人気を確立している作品。登山文学にありがちな崇高な勇気と団結と意志力礼賛とジェントルマン帝国主義のパロディで、『ボートの三人男』(本文中で言及されている)と「モンティ・パイソン」を混ぜ合わせたような感じのユーモアの感覚と言えばいいんだろうか。腹を抱えて笑いながら読んだ。

冒頭近くから、登頂隊の外渉・言語担当のコンスタントと医者のプローンが、現地 ヨギスタンの人々について話す部分。

コンスタントは、その地方を通って山に行かなければならないヨギスタン地方について我々に話して聞かせた。彼がいうには、現地人は独立不羈で、友好的で冷静な威厳をそなえ、快活である。彼は特に深く研究してきたヨギスタン語は、巨石文化時代言語族の一分枝で、動詞はなく、発音はすべて腹部で行われる。
 それを聞いたプローンは、それはばかげている、発音をすべて腹部で行うなら、常に胃炎にかかっていなければならないと断じた。コンスタントは、胃炎はまさに国民病で、人口の95%は皮下で胃炎にかかっていると切り返した。プローンはもしそうならどうして快活でいられるのか分らないと言った。コンスタントは、それは彼らの性格の強靭さによるものであると説明した。

・・・私が訳したものを読んでみると全然面白くない(涙) 『ボートの三人男』は丸谷才一の名訳があるけど、この作品も誰かが訳さないだろうか。優れた翻訳家なら、面白い日本語に移すのはそんなに至難のわざというわけじゃないと思うけど。