ヒポクラテス「黒い病」

モルガーニの書簡診療の続き。モルガーニが「この手紙に書かれている病気は、ヒポクラテスのどこそこに記されている病気である」といってパドヴァ大学の教授の実力を見せつけたが、ヒポクラテスの該当箇所を念のために読んでみる。「『病気について』の第二巻の最後のあたり」とモルガーニが書いていたから、すぐに分かった。私はヒポクラテス集成の学術的な英訳を持っていなくて、Loeb で済ませていて、Loeb のヒポクラテスの第5巻の最後のあたりである。私の Loeb についている章番号でいうと、Diseases II, c.73-75.

これは黒い物質を吐く病気である。その物質は、ワインのおりのようでもあり、血や、酢や、唾液のくず、黄緑色の胆汁のようなものであることもある。黒い血のようなものを吐くときには、のどと口が吐しゃ物で焼け付くようになり、歯が染みるようになる。吐いた後は、みじかい間、患者はよくなったように見える。患者はおなかを空かせやすいが、食べ過ぎることもできない。食べないときには、おなかの中で音が鳴って、唾液がすっぱい。しかし、何か食べると、おなかがもたれ、胸と背中に尖筆で刺したような痛みがある。体の側部がいたみ、軽い熱があり、頭痛がし、目がかすみ、脚は重く感じられ、顔色はくろずみ、体重が落ちる。この患者には、頻繁に薬を与え、それがふさわしい季節にはホエーとミルクを与えるのがよい。甘く、油っぽい食べ物を避けさせ、できるだけ冷たくお通じをよくする食べ物をとらせるのがよい。酔っ払ってはいけないし、性交にふけってもいけないが、もし性交するときには、空腹の状態で蒸気浴をしてからにせよ。