精神病院法へ

中央慈善協会『精神異常者と社会問題』(東京:中央慈善協会、1918)
呉秀三「精神病者の救済ならびに精神病学的社会問題」
永井潜「民族衛生上より観たる精神病」
三宅鉱一「精神病的中間者及び色情異常者の救護」
山崎佐「精神病者に対する医学と法律との交渉」
武宗三「本邦精神病者の統計的観察」
杉江董「社会的危険性精神病者とその処置」
井村忠介「監獄に於ける精神病者をいかに保護すべきか」
後藤城四郎「白痴および低能者とその救済」
高峰博「買笑婦と精神病」
樫田五郎「我邦における精神病院の発達と現況」
杉田直樹「欧米における精神病院の発達および現況」
石井亮一「白痴教育発達史」
池田隆徳「欧米における白痴院の発達および現況」
黒沢良臣「感化院について 附 感化教育と精神科医」
橋健行「飲酒と精神病ならびに酒客院の施設」
下田光造「癲癇および癲癇病院」
片山国嘉「精神病者監護法の改正よりもまず精神病者法および精神病院法を制定せよ」231-239.
杉山四五郎「精神病者保護について」

片山国嘉が語ったという、精神病者監護法制定のときの事情は、本書、232pに書かれている。「現行の監護法は、その制定当時において私宅監置と扶養義務者と、その二点のみを主体として作られたるものにして、はじめよりして甚だ不完全なる法律を免れず。他日完全なる精神病者法、および精神病院法の制定せらるるまでの一時の応急姑息の法律たるにすぎざりしものなり」232-3

精神病者法というのは、精神病者の保護・救済を目的として、病者に治療・保護を与え、特殊教育をほどこし、授業を与える[=授産する]ごとくに関し、法律の明文をもって規定することである。この法律構想の説明はごく短く、あとは精神病院法についてであり、精神病院法(1919)にかなり近いものになっている。

精神病院法により、中産以下の私宅監置はなくなっていくだろう。将来的にのこる私宅監置は、富豪または成金の贅沢行為に限るべきものなるがゆえに、今日とは全然その趣を一変するだろう。235-6

治療を主とする患者を収容する病院、監督・保護を主とする病院、両者をかねるもの、という三つの病院を構想していた。234

公立精神病院の機能をになう私立病院(のちに代用病院と呼ばれることになった)について。私立病院は、これを一面より論ずれば営利を目的とする病院なるをもって、その経営にあたり、相当の利益収入をはかるはもちろんなるも、右に記したるがごとき公の補助を受けるに対し、これに相当なる程度において、患者に対しその利便をはかって入院料を低額に定めるがごとき報酬的行為を行うこと。 238

こういう仮設はどうだろう。代用精神病院は、もしかしたら、私費患者についての入院料の上限や、等級の規制があったのかもしれない。だから、代用精神病院ではなく、また、精神病院ですらない私立病院を作って、上層の私費患者を受け入れたのかもしれない。この規制云々の話をフォローしないと。