20世紀初頭の欧米における新しい精神病院の形成

Scull, Andrew. "Creating a New Psychiatry: On the Origins of Non-Institutional Psychiatry in the USA, 1900–50." vol. 29, no. 4, 2018, pp. 389-408, doi:10.1177/0957154x18793596.

19世紀末から20世紀中葉の欧米において、精神病院は多様化をはじめていた。パリのビセートルやサルペトリエールなどの病院、イングランドのハンウェルのようなアサイラムだけが目標になったわけではない。それらとは異なる、新しいスタイルの精神医療を求める動きも存在していた。欧米で1960年代にはじまった精神医療の改革、それに基づく急速な精神病院の閉鎖と地域精神医療への移行は、19世紀の末から20世紀の中葉にかけて形成された動きが存在していたから、その運動が劇的であったと考えられる。

日本の精神病院の形成は、まさにこの時期に起きていた。19世紀の末に始まり、1900年の精神病者監護法、1919年の精神病院法、そして1950年の精神衛生法によって法制度化されるという経路を取っていた。欧米がアサイラムから離脱して新しい形式に向かおうとした時期であった。そのため、日本の精神医療が同時代の目標として考えていたのは、アサイラムを模倣することだけではない。ドイツやアメリカが目指した新しい精神医療も日本において実現が目指されていた。