Howell, Alison and Jujian Voronka, “Introduction: The Politics of Resilience and Recovery in Mental Health Care”, Studies in Social Justice, vol.6, no.1 (2012): 1-7.
20世紀の中葉から後半にかけて、欧米各国で脱精神病院化が起きた。精神病床の数は各国において激減し、長期収容型の精神病院の収容とは違うレジームが現れた。(その時期に日本の精神医学においては飛躍的な病床の伸びがあり、1990年代に安定して、現在でも減少はごくわずかである)
20世紀の中葉から後半にかけて、欧米各国で脱精神病院化が起きた。精神病床の数は各国において激減し、長期収容型の精神病院の収容とは違うレジームが現れた。(その時期に日本の精神医学においては飛躍的な病床の伸びがあり、1990年代に安定して、現在でも減少はごくわずかである)
この新しいレジームのキーワードが、recovery & resilience であった。これらは精神病院に収容された元患者による批判、政治的な批判、そしてネオリベラルな政策である支出削減に対応したものであった。このキータームは、ある意味で精神医学者、心理学者たちによって取り込まれ、もともとは医学の権威の外で人々が生きることを可能にする仕組みであったものが、医学の中に置くための概念に読み替えられている。かつては、精神病を経験したものが、医学以外のシステムの中で生きるための概念が、現在では、再び医学のシステムの中に取り入れるためのものになっている。元患者の内的な生活を「命じられたように」管理する方法に従うようにしている概念であり、一方では psy 専門家の権威は保たれたままである。本来、ここに存在しているのは、社会的正義の問題であり、精神病の診断と医療には権力や貧困や差別などが深くかかわっている。Recovery and resilience を、テクニカルな psy-discipline の問題ではなく、社会正義の問題として捉える方法を探らなければならない。
北米においては、二つのプロフェッション、すなわち、健康を管理する専門職である医学と、正義と合法を管理する専門職である法律学・政治学の間の対立は激しい。二つの専門職とその背景にある学問の対立というのは、必ずしも悪い事ではなく、両者の対立を軸にして発展した医療倫理のような学問もある。