Bogousslavsky, J. and L. Tatu (2013). "French neuropsychiatry in the Great War: between moral support and electricity." J Hist Neurosci 22(2): 144-154.
第一次世界大戦期のシェルショックに対する精神神経科の治療法を、フランスを皮切りにヨーロッパ各国を並べてざっくり較べた論文。特に注目されているのは電気ショックの利用。この電気ショックは、治療の意図と同時に、あるいはそれよりもむしろ重要だった効果として、詐病者をすぐに前線に送り返すことが目標であった。
戦争とともに大量に発生した兵士の神経症は、フランスでは、シャルコーの時代にいったん流行したヒステリーの復活とみなされた。ババンスキーの影響のため、自己暗示であるとみなされ、ヒステリーと詐病の中間であると考えられた。医師たちの目標は、この詐病者たちを即座に前線に返すことであった。そのため、苛烈な「魚雷療法」と呼ばれた電気衝撃療法が用いられた。イギリスでは心理的な理解が発展した。ドイツでは、比較的早い段階で心理的なトラウマ説が用いられたが、敗色濃厚になると、詐病と考える方向にシフトした。オーストリアでは、将来ノーベル賞を取ることになるヴァグナー=ヤウレックが苛烈な電気療法を用いて、戦後に激しい批判の対象となった。WJが行った電気療法の記述が生々しくて、授業で取り上げるのにちょうどいい。