ターナー『鳥たちの博物誌』

Turner, David, and 貞徳 別宮. やぶにらみ鳥たちの博物誌 : 鳥とりどりの生活と文化. 悠書館, 2015.
Turner, David. Was Beethoven a Birdwatcher? : A Quirky Look at Birds in History and Culture. Chichester: Summersdale, 2011.

新年にはいつも南方熊楠『十二支考』から、その年の干支の項目を読むようにしている。古今東西の博覧強記という言葉は、この人物のこの著作にこそふさわしい。今年の酉年の記述もとても面白そうだが、別の書物から始めた。別宮貞徳とお弟子さんの翻訳チームが訳した書物である。もちろん熊楠とは味や趣向が違うけれども、私は同じくらい面白いと思う。着実な鳥学(ちなみに ornithology という。『マダム・バタフライ』で出てくる言葉)や鳥の生態についての近現代の調査が明らかにしたことが、歴史や文化の話とミックスされている。もちろん鳥学や一部のバードウオッチャーには共感が込められているが、それを皮肉に捉えて描く余裕もある。トキの保護に関する日本政府の善意と科学と珍妙さの茶番を、笑いを含ませて描くあたりは特に面白い。タイトルのベートーヴェン云々は、交響曲に鳥のさえずりにあたるメロディーが挟まれていることに由来する。

翻訳されて日本で刊行された図書だと3,000円くらいで、英語版の Kindle では600円ほどだった。図書館で日本語訳を借りて読み、手元におくべきなら英語の Kindle を買うというのが、いつものパターンになっている。日本でも安価な電子図書の革命が始まっているようで、状況はよくなるのだろうと思っている。

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