一夫多妻制のメリットとデメリット(鳥の話です 笑)

日本野鳥の会の『野鳥』に面白い記事があったのでメモ。 『野鳥』2017年8月号(No.817)濱尾章二「鳥の繁殖生態学
 
鳥のオスの交配行動を見て、一夫多妻がプラスなのかマイナスなのかに触れる。もちろん地雷だらけの場に踏み込むきわどい記述である。著者がそれをどこまで意識しているのかどうか分からないけど(笑)
 
鳥のオスは、さえずりをしてのは、メスを獲得して、交尾して、自分の子供を残す。メスと性交すると、そのメスにぴったりよりそって世話をする。これを「メイトガード」という。もちろん抱卵したメスを守って餌を取ってあげたりする美談でもあるが、同時にメスの性行動を監視することでもある。メスが他のオスと番おうとするし、この時期に他のオスと交尾してヒナが生まれてそれを育てると、他のオスの子供を育てるという、無意味で腹立たしいことをすることになる。それを避けるためのメイトガードである。このメイトガードは重労働で、ツバメのオスは10日間で体重が2グラム減る。これは体重の10パ―セントであるとのこと。
 
ここまで読むと、一夫一婦のシステムが合理的に見える。ところが、オスもメスも、このシステムとは相いれない傾向を持っている。自分の子供をとにかく多数残すためには、一夫一婦は最適な方法ではない。性交頻度を頻繁にするためには、乱交の状態がある程度必要になる。オスはあるメスとの交尾が終わるとすぐに別のメスを探しに行くし、メスも先に触れたように他のオスを受け入れる。複数のメスとの交尾に成功したオス、あるいはそう信じているオスは、複数のメイトガードがあるから、ものすごく忙しい。性交そのものではなく、その後のケアで、へろへろの状態である。それでも、結局、たくさんの子孫を残すことができるらしい。おそらく、一夫一婦制を守ったオスよりも、という意味があるのだろう。メスにとっても、そうなのだろうか。 
 
一夫一婦制は確かに合理的だけれども、その合理性を破り、かなりの負荷を自らに掛けながら、一夫多妻制と多夫一妻制への冒険めいたことをしている。そしてそれが有利というか有理というか、そういう言葉で表現されている。また、著者が書いてない面白い問題もある。相手にされなかったオスはどうするのだろう。人気がありすぎたメスはどのオスにメイトガードされるのだろう。