『いつか王子駅で』

堀江敏幸. いつか王子駅で. 新潮文庫. Vol. ほ-16-1: 新潮社, 2006.

この本を買ったのは王子のあたりについての感覚を持ちたかったからなのか、堀江敏幸というフランス文学を修めた作家に興味があったのか、どちらか忘れてしまった。王子のあたりでも、「尾久」という地域が軸である。私が調べている病院があった西ヶ原のあたりとは少し方角が違うが、今の段階では、そんなことはどうでもいい。その地域に住む人たちについての知識を文学から持ちたかったということにしておく。

 

登場人物はこのような感じである。

私-おそらく著者の分身だと思うが、外国文学を非常勤で教える人物。東京水産大のようである。
正吉さん-友人。印章屋で昇龍の彫り物をしている
居酒屋「かおり」の女将
古書店の主人の筧(かけい)さん
旋盤の工場をしている大家の米倉さん、娘の咲ちゃん
数々の文学作品、童話、競馬の馬たち

 

小説として面白い。大事件なり何かの発展なりストーリーなどは、まったくない(笑)でも、読んでいい感じが残る。ただ、作品中盤から競馬の話がちょっと出すぎた感じがあって、競馬の第四コーナーにたとえられた空間で話が終わるのは、ちょっと違和感を感じた。前半の木曽馬の「馬力」の話は納得した。