ロシア・インフルエンザは1889年に始まって1890年に流行が一応終わっている。20世紀には著名な3つのパンデミックがあり、スペイン・インフルエンザ (1918)、アジア・インフルエンザ (1957)、そして香港インフルエンザ (1968) であるが、その前のパンデミックであると言われており、いくつかの研究論文がある。Smith の議論も面白い。今回授業の準備で読んだのはヴァレロンの論文で、セント・ペテルスブルクからイギリスまでの流行地移動の地図も面白い。このように1889年冬から1890年春までに移動した。致死率 case fatality で言うと、1957年と1968年と同じくらいの0.1% から 0.3パーセントであり、1918年の約十分の一くらいである。ただ、これがスペイン・インフルエンザのようなまさに全世界へのインフルエンザではなく、基本はロシアからヨーロッパにという原理である。日本にも少し来たが、東京と神奈川(横浜)に限定されている。
Smith, F. B. "The Russian Influenza in the United Kingdom, 1889–1894." Social History of Medicine, vol. 8, no. 1, 1995, pp. 55-73, doi:10.1093/shm/8.1.55.
Valleron, Alain-Jacques et al. "Transmissibility and Geographic Spread of the 1889 Influenza Pandemic." Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, vol. 107, no. 19, 2010, pp. 8778-8781, PubMed, doi:10.1073/pnas.1000886107.