ナチスの収容所と月経の記録

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History Today にナチス強制収容所で行われた月経の問題についての優れた記事が掲載されていたのでメモ。 

ジェンダー論では月経の問題が重点的なものとして取り上げられている。私自身もセンスが古く、昭和のおっさんか平成のおっさんなので、月経を正面から取り上げたことがない。しかし、次の講演では月経を少し取り上げて、パラグラフを数個作ろう。これは私が見ている昭和戦前期の精神病院の症例誌においては、組織的に月経を記録することが行われているし、月経から精神疾患を論じる部分もある。

そんなことを考えていて、まだ調べられずにいたら、たまたま History Today にナチス強制収容所における月経の問題を議論する記事が掲載されたので、喜んで読んだ。まず、優生学の医学者たちが、月経というか排卵に非常に敏感であった。強制収容された女性に関して、彼女たちの排卵を取り上げて研究したという。しかし、このモデルだけで考えると、ハンナ・アーレントが論じているような、人間の強い結びつきを破壊した権力と暴力の空間となる。実際に収容された女性たちに尋ねると、月経を軸にして女性観の結びつきが作られたケースもあるとのこと。ことに少女の年齢で、強制収容所には両親が不在であるが、そこで初潮を経験する場合には、女性の精神が取り上げられたという。しかし一方で、排卵と子供作りの一体化という、優生学の裏表の問題もあるとのこと。東京の私立精神病院の月経の問題、もう一度考えてみよう。

それ以外にも楽しい文献がたくさん載っている。ぜひご覧になってください。図版は1941年に収容された女性の記録から月経中の女性が処理されるスケッチ。

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強制収容所の月経処理の光景の描画です。