日本のゆるかわ美術と精神疾患の患者の描画

 

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 芸術新潮』の最新号が日本のゆるかわの特集である。 直接的な背景にあるのが三井記念美術館の「日本の素朴絵ーゆるい・かわいい・たのしい美術」である。これらの作品は個人的には好きでも嫌いでもないが、めくってみると、とても面白い。自分の専門の研究上で、同じような描画が焦点になっている。絵画でいうと、松沢病院に収容された画家が、ピネルの狂人解放の絵のイミテーションなどを描いた例が、どう捉えていいのか分からないくらいのぶっとんだ感じがあるが、現実に描かれているもののほとんどが、ずっと「素朴な」絵画である。

これは文学についても同じことが言える。もともと傑出した文学者で、精神疾患が現れた時にそこに狂気が現れるタイプの作家がいる。モーパッサン太宰治芥川龍之介がそうだろう。しかし、それらは例外タイプで、ほとんどの例が、どうにもならないほど凡庸な作品である。文章自体がぐずぐずである。これを「素朴な」と呼べるのか、まあ、そのようなことを考えてみよう。