ロンドンのペストと人口学と錬金術

 

https://quod.lib.umich.edu/e/eebo/A41827.0001.001/1:9?rgn=div1;view=toc

 

ジョン・グラント (John Graunt, 1620 – 1674) 。職業は小間物商であるが、17世紀のロンドンで人口学を切り開いた人物として著名である。ことに、彼が書いた Natural and Political Observations Made upon the Bills of Mortality は、ペストを軸にしてロンドンの疾病と人口の構造を考えた書物で、大学院生の時に熱心に読んだ。今回も、ペストについて少し触れる場面があったので、これを読んでとても懐かしかった。この書物の冒頭に、ロンドンの人口の増減の原理を理解するための106項目という有名な箇所があり、特に懐かしがって、あるいはペストの項目を探すために(笑)、読んでいた。その中で99番目が意表をつかれて非常に驚いた。錬金術錬金術師に関する議論である!実は、こんな場所にこんな議論があったという記憶がない。グラントならネット上で読めるから少し読んで、とても面白かったのでメモ。

人口学に関する知識を求めることは、世界にとっても錬金術師にとってもよろしくない。錬金術は、銀を金にするか、王様につかえるか、欲張りの需要にこたえるか、色々なことをこそこそとしているかで、ロンドンの人口について知ったり口を出したるするべきではない。人口はどのくらいか、男女比はどうなっているか、教会と教派による人口の増加減少の差はどのようか、ペスト流行時にいったん空白になる家に帰ってくる速さはどのくらいか。このような問題に対するアプローチは、錬金術が答えるものではないし、人が錬金術ばかり研究していて人口学の素材を確保しないと、世界と錬金術の双方にとってろくなことがない。

錬金術は私が苦手にしている主題であることもあり、実はグラントに大変な共感を持ちました(笑)