医学と歴史を両方勉強する仕組み

医学史の研究動向に関する論文を大急ぎで書いている。明日には仕上がって原稿を送ることができる。主題はイギリスの医学史の発展で、それを振り返りながら、これからの日本で医学史はどうなるのだろうとやはり考えてしまう。その中で考えがまとまった部分があり、これはもちろん原稿にはしないので、ここに書いておく。
 
医学史は医学・医療と歴史学の二つの学問が接した領域にあり、どちらの学問も必要である。私は医学を習ったことはなくて歴史学側であるが、積極的に医師や看護師と一緒に仕事をしている。歴史学の世界には、医者よりの医学史を批判する声もないわけではないが、多くの歴史学系の医学史研究者は、医学と歴史学の拮抗対立は重要な洞察を得るマイナー・エピソードにするべきであると心得ている。医学のほうでも、恐らく似たような状況があるだろう。ここは、それほど心配するべきではない。
 
一つの大きな問題は、医学部出身の方をプロの医学史研究者にする手段である。医学を学び、人文社会学系の大学院で博士課程だけなら3年間、修士を入れると5年間勉強すると、歴史系の医学史を学んで立派なMD PhD となることができる。学部水準の歴史学の知識もあるとよくて、そのためには慶應だと通信教育の過程がある。そのあたりを考えると、医学部から歴史学を学んで立派な医学史家になる道が開けて始めている。最短で3年というのは、意味がある数字だと思う。
 
もう一つの問題が、歴史学出身の学生が医学に接する仕掛けである。これがなんとかなる方法をなんとかして見つけよう。順天堂の坂井先生は解剖学の実習を非医学部生にも提供していた時期があり、素晴らしい試みである。私も行きたかったのだが、機会がないままこの年になってしまった。このような企画は、他にあるのだろうか。