『ブーリン家の姉妹』

現実逃避をして、映画『ブーリン家の姉妹』を観る。イングランド国王のヘンリー八世に愛された二人の姉妹を描いた映画。ヘンリーの離婚と宗教改革の原因となったお姉さんのアンを『スター・ウォーズ』のお姫様のナタリー・ポートマンが演じ、ヘンリーはエリック・バナが演じている。妹のメアリーは、最初にヘンリーに愛されて子供(私生児)を産む役だけれども、歴史的にはあまり有名ではなく、私は映画を観ながら、このキャラクターは歴史上実在しているのかどうか不思議に思っていたくらいである。後から調べたら、実在はしているけれども、『イギリス伝記事典』にも掲載されていない。あと、これは言うまでもないことだけれども(笑)、メアリーは、スカーレット・ヨハンソンが演じている。

お姉さんは上昇志向で計算高い。一家の栄達を願う気持ちもあったが、主として自分の野心から、王のヘンリーを誘惑しようとするが、最初は失敗する。その後、おろかな駆け落ちをして国外に追放されるが、フランスの宮廷で男を操縦する手管を身につけて帰国し、その後は、ヘンリーを面白いように手玉にとって、王に宗教改革まで起こさせて、結局は正妻の地位を手に入れる。妹のほうは純情で、宮廷での栄達よりも静かな生活とつつましい幸せを愛する女性だけれども、いざというときには、自分に酷い仕打ちをした姉にも深い愛情を示して身の危険を冒して命乞いをする強さを持っている。そのあたりをポートマンとヨハンソンがなかなかうまく演じていた。離婚してカトリックの信仰を捨てたヘンリーが、怒りと悔悟に駆られながらすべての原因となったメアリーを犯すシーンと、ヘンリーの子供を流産し、寵愛を失うことを恐れて狂乱したメアリーが、子供を宿すために実の弟に性交を迫るシーンは、鬼気迫るものだった。あとは、イギリスの俳優たちが脇を名演技で支えている。姉妹のお母さん役で、『フォー・ウエディング』のリスティン・スコット・トマスを久しぶりに見て、嬉しかった。