赤坂真理『太陽の涙』

いただいた書物を読む。岩波書店から2008年に出版された、赤坂真理『太陽の涙』。大島梢さんという画家が豪華な挿絵をつけている。何を思ったか(笑)岩波書店がはじめた「ブンガクとヴィジュアルのコラボレーション」のシリーズの Coffee Books の一冊で、とても素敵なつくりで、プレゼントに最適な本。

内容は、とても面白い。南洋の小さな島の神話世界と、その島に核融合炉ができた現実の間を、儀礼を通過していく主人公の少年の視点から美しく悲しく物語っている。男子の通過儀礼を題材にした物語は、小さいときから大ファンで、この作品も劇的な盛り上げと官能性にしびれた。物語の最後は、この島の秘密の鍵をにぎる特別な金属でできた剣が、岩に埋まっているを引き抜くというジークフリートの主題のあと、少年は死んだ恋人と二人で一緒に融けて「太陽の涙」になってという、それはそれはロマンティックでエロティックなエンディング。

挿絵は大島梢さんという画家の方で、リアルで精密で、それだけにいっそう異物感が際立つような不思議で不気味な雰囲気の細密画の作品を描かれている、