必要があって、障害の経済学の論文を読む。文献は、松井彰彦「『ふつう』の人の国の福祉制度とスティグマ」『経済セミナー』2009年8-9月号22-23.
日本の社会福祉のレジームの位置づけについて、とても面白いことをいっていた。「ふつうの人」を年金においた社会保障、たとえば年金や医療においては、フランス・ドイツ型の「保守主義」レジームになっている。それは、強制力がある社会保障と、それに伴う強力な給付を伴うものだという。しかし、特殊なニーズを持つ人々を対象にした福祉制度は、アメリカやイギリスに見られる「自由主義型」になっていて、自己責任と旨として、競争からこぼれた人々に小額の給付金を与えるものだという。OECD諸国の中で較べると、公的社会保障の支出は加盟国の平均とほとんど変わらないのに、障害関連の公的支出はOECD平均の1/3以下だという。つまり、「ふつうの人」と「そうでない人」のダブル・スタンダードになっている。この仕組みは、「そうでない人」に対するスティグマを発生させやすい。
研究者の間では当たり前のことかもしれないが、とても面白く、インスピレーションをもらった。いろいろな方向を示唆してくれるが、社会保障を考えるときには、具体的な問題から出発して、それがどのように解決されるのかということから出発して、それをどのような形で公的な支出が支えているかという方向で考えたほうがいいんだろうな。