あんま・マッサージの歴史

送っていただいた論文を読む。文献は、長谷川尚哉「統合医療で取りざたされる徒手療法のあはき法との整合性〜癒し、リラックスの名の下に無免許施術が広がるわけ〜」これは、『日東医学会誌』の2009年9月号に掲載されているという。詳細は、以下のHPを参照されたい。 
http://ameblo.jp/oisoarom/

「あんま」というか、手を使って身体の表面に働きかける医療は、西洋でも日本でも歴史は古く、律令時代の医学から存在するが、これを視覚障害者が鎌倉時代につくった同業者組合(当道座)を使って法的な規制のもとにおくようになったのは徳川時代からである。徳川時代の規制もゆるく、目が見える人間でもあんまを行うこともあったようである。、明治期の初期には、西洋医学への切り替えにともなって大きな混乱が生じ、実質上誰でもあんまやマッサージなどを行うことができる状況になった。しかし、明治44年に「按摩術取り締まり法」で、あんま術を開業するためには、地方長官の許可を得ることという規制が掛けられる。しかし、明治期には、あんまは、西洋医学のマッサージなども取り入れて変質しており、何が規制されるべきあんまであり、何が自由に行っていいことなのか、という問題にはグレーゾーンが残り続けていた。その後、昭和5年の東京府の「療術行為の規制」を経て、終戦後はGHQが全面禁止しようとするが、昭和22年には『あん摩、はり、きゅう、柔道整復等営業法』が出て、これが1988年の改正まで保持される。その間も、高周波治療をめぐる訴訟は「有害な場合だけ処罰」という誤った法解釈をうみ、エステティックマッサージ、アロマテラピーなど、「おしゃれ系」のマッサージ行為についての混乱が続いている。

著者はプロの歴史家ではないが、丁寧なリサーチに基づいて、とてもよくまとまり、重要な事件をカバーしている、すぐれた案内図である。