精神分裂病の歴史

Gilman, Sander L., “Constructing Schizophrenia as a Category of Mental Illness”, in Edwin R. Wallace, IV and Jon Gach, History of Psychiatry and Medical Psychology (New York: Springer, 2008), 461-483.
画像の分析で一時代を切り開いた著名な医学史研究者であるサンダー・ギルマンによる、精神分裂病のカテゴリーの歴史。分裂病を非歴史的な実体をもった疾病と考えてその歴史をたどる方法を批判して、分裂病という「何かを説明するパターン」がどのように構成されていったのかを調べる、70年代以来の古典的な手法を取っている。前半の主たる話は、19世紀の前史、クレペリン、ブロイラー、フロイトという教科書的な内容である。後半はナチスの優生学的な精神病政策の基礎となったエルンスト・リュディンの分裂病の疫学と、その生徒のフランツ・カルマンの精神病研究の概説。カルマンは特に双子の例を用いた精神病研究で名高く、彼の研究は、戦後の精神病の遺伝研究の基礎となっていた。

クレペリンの dementia がラテン語で、ブロイラーの schizophrenia がギリシア語であるということは、言われてみればその通りだけれども、それほど重要なことなんだろうか。