昭和16-17年の女学校におけるヒステリーの流行性発生
未読山から論文を読む。佐藤亨「『ヒステリー』の流行性発生について」『順天堂医事研究会雑誌』no.589(1943), 19-29.
ヒステリーの流行性発生の存在は知られているが、その報告はまれである。筆者である佐藤は、東京文理科大学教育相談部部員として、都下某女学校において発生したヒステリーの流行を調査したので、それが報告される。
全体としては、昭和16年6月24日から17年の3月23日まで、合計15名がヒステリーの発作を起こした。このうち、2月の後半に大きな発作の集中がみられる。発作は、いわゆるヒステリーの大発作のような大仰なものではなく、手足などに震えがくるものであった。それぞれの生徒の家庭構成と性格などが調べられて、「ヒステリー性」の性格であるからという方向の推論がされている。
「発作を起こした生徒の環境を子細に見ると、一人子とか、父または母の溺愛とかを認められる。とかく、かかる児は幼少の折から、周囲によって、自己の思うままになるようにしむけられるので、もし、自己の精神的不満か又は苦痛があると、代償的に、肉体的にある表現を起こす魯考えられる。(中略)暗示は、自己暗示もあるが、他人よりの暗示友人なり又家族の周囲のものの暗示もこれを助長したことも否めない。かつ、この流行が互いに親友の間に濃厚に行われたのは注意すべきことである。」 29