臓器移植のグローバル・トレードと医療倫理

Scheper-Hughes, Nancy, “The Last Commodity: Post-Human Ethics and the Global Traffic in ‘Fresh’ Organs”, in A. Ong and S.J. Collier eds., Global assemblages: Technology,, Politics, and Ethics in Anthropological Problems (London: Wiley-Blackwell, 2004), 145-167.

人間の臓器のグローバル・トレードを調査した人類学者による論文を読む。臓器移植が国際的なビジネスになって、先進国の富裕な人々が、(脳)死体から取られた臓器ではなく、生体から取られたより新鮮な臓器を希少な商品として欲望するようになるとともに、発展途上国の中心都市にはその臓器を摘出させる合法・半合法・非合法のさまざま臓器摘出の仕掛けが存在するようになった。医療倫理においても、かつての医者と患者の間の個人的な関係に中心をおいたヒューマニストの倫理が変質し、それが「全体の利益」を重視する功利主義的なものになった。著者は、時として非合法な行為を調査するために、世界各地の発展途上国のスラムや、監獄や精神病院など周縁的な場所に身分を隠して潜入した、ツワモノの人類学者である。

ポイントは、グローバルな資本主義の原理にしたがって、世界中の低開発国、貧困地域、倫理の荒廃が起きている生活圏などから集められる「生きた臓器」という欲望される商品の流通と、その中で構築される医療倫理の関係である。