<大和魂は大変結構だが、だからと言って日本人に精神疾患が少ないわけではない>

村松英雄『戦争と精神病』日本精神衛生協会刊・精神衛生パンフレット7号、脳研究所、(1938).

 

村松は東大精神科を出て、ロックフェラーの研究員としてハーヴァードに留学したのち、ドイツにも留学した。東大と松沢病院で活躍したのち、1950年に名古屋大学の精神科の教授となる。

 

出征軍隊にとどまらず、息子・夫・父を戦場に送った家族の精神状態、国家存亡の時期における国民の健康も重要だが、ここでは直接戦闘行為に関連する精神病を取り上げる。

 

素因と誘因:素因は教育、習慣、鍛練によって改善し補強しうる。しかし、誘因が明らかな例が多いわけではなく、早発性痴呆では70%が誘因不明である(東大松沢)。また、梅毒患者中麻痺性痴呆になるものは1-2%しかいない。(この数字を知りたかった!)

年齢:30歳以下が多い疾病:早発性痴呆は30歳未満が75%、躁鬱は50%、癲癇は80%、それに対して中年が多い疾病もあり、麻痺性痴呆は35-46歳が46% (東大松沢)

 

我が国は精神病床が少ないため、国民全体の精神疾患の数や特徴を正確に知ることはできないが、日本に限り精神病者数が少ないと考えられる特別な理由は見いだされない。ここぞというところで大和魂を発揮する国民性は歓迎すべきだが、それのみで問題が解決されるわけではない。外国を参考に考えると、1000人中4人の精神病者、1-2人の癲癇、15-20人の比較的重い低能者、それと同じくらいの病的性格異常者がいると考えられるから、1000人中40人から50人程度の患者・障碍者がいることになるだろう。

 

大和魂は大変結構だが、だからと言って日本人に精神疾患が少ないと考えられるわけではない>という、しごくもっともな説を唱えていることに注意。同時期のナチス・ドイツの精神医学者たちによく見られた、ドイツ民族は優秀で劣等民族に精神疾患が多いという考えとはかなりトーンが違う。